静岡混声合唱団ひびき創立30周年記念演奏会は、三部構成による多彩なプログラムで構成されています。第1部はアカペラによる無伴奏合唱。ラインベルガーの「夕べの歌」は、新約聖書ルカ福音書に登場する「エマオへの道」のエピソードを題材とし、夕暮れの祈りを込めた深い響きが特徴です。続くローリゼンの「Ubi Caritas et Amor」は「愛と慈しみのあるところに神はおられる」というメッセージを古代聖歌から受け継ぎ、現代的に昇華させた作品。難曲でありながら、あたたかく光に満ちた音楽が広がります。また、やなせたかし作詞・木下牧子作曲「さびしいカシの木」は、家族への想いを綴った詩に寄り添う合唱曲で、日本語の美しい響きが心に届きます。 第2部はピアノ伴奏と共に楽しむステージです。池辺晋一郎作曲「三つの不思議な仕事」は、詩人・池澤夏樹との交流から生まれた合唱作品で、エーゲ海の空と海を思わせる伸びやかな旋律が魅力です。さらに、信長貴富編曲による「見上げてごらん夜の星を」は、震災復興を願って広がった「歌おうNIPPON」プロジェクトの一環として生まれた編曲版で、希望の歌声が会場を満たします。 そして第3部は、フォーレ作曲「レクイエム」。モーツァルトやヴェルディと並び称される三大レクイエムのひとつであり、恐怖や怒りではなく「永遠の安らぎ」を主題とした独自の解釈が魅力です。フォーレは「死を恐怖でなく安息と捉える」という思想を音楽に込め、穏やかで人間的な響きを生み出しました。合唱とオーケストラが織りなす柔らかなハーモニーは、聴く人の心に深い感動をもたらすでしょう。 アカペラの繊細さ、ピアノと歌の親しみやすさ、そしてオーケストラと合唱の壮麗な響き。30周年記念にふさわしい、多彩で心豊かな音楽体験をお届けします。